「ポーランド映画祭2024」11/22~28
ノーベル文学賞作品の映画化から
気鋭のヤン・コマサまで

「ポーランド映画祭2024」11/22~28
ノーベル文学賞作品の映画化から
気鋭のヤン・コマサまで


2024.11.13

4 min read

今年で13回目の開催を迎えるポーランド映画祭。
2024年11月22日(金)から28日(木)にかけて、YEBISU GARDEN CINEMAにて厳選された6作品が上映されます。

全編を油絵で表現するアニメーション作品、ショパンコンクールの舞台裏を映したドキュメンタリーや、ユダヤ人の青年にまつわる復讐劇を描いた作品、新鋭監督の3作品など、ポーランドを語るうえで欠かすことのできない古今、多様な側面に迫るラインナップ。どれも話題作ばかりで目が離せません。
 
今回はそんな全6作品をご紹介します。

ノーベル賞作家の原作を油絵で描いたアニメーション作品

『農民』/Chłopi

ちょうど100年前の1924年にノーベル文学賞を受賞したポーランドの作家、ヴワディスワフ・レイモント。20世紀初頭を生きる農民の悲喜こもごもを季節ごとに描いた彼の代表作「農民」を鮮やかな色彩で映画化。物語と同時代に活躍したポーランドの油絵画家たちの作品をモチーフに、実写映像を油絵に描き直すという斬新な手法で、ダンスや音楽に彩られた農民たちの生活を見事に再現する。監督は史上初めて全編絵画で構成されたアニメーション作品『ゴッホ 最期の手紙』(2017)で話題を集めたドロタ&ヒュー・ウェルチマン夫妻。
 
監督:DKウェルチマン、ヒュー・ウェルチマン
2023年/ポーランド語/ 114分/カラー

© Pianoforte

ショパンコンクールに挑む若き天才ピアニストをとらえたドキュメンタリー

『ピアノフォルテ』 /Pianoforte

5年ごとにワルシャワで開催されるショパン国際ピアノコンクール。2021年の会場にも世界中から若き音楽家たちが集まった。そんな舞台裏を追ったドキュメンタリー。反田恭平さんが2位に入賞した年のコンクールでもあります。まさにこの瞬間のために、幼い頃から準備をしてきた参加者たち。常人には想像もつかない激しい練習を経て、自らの力を最大限発揮できるものもいれば、重圧に押しつぶされてしまうものもいる。それぞれのやり方でコンクールに向き合い、すべてを乗り越えて素晴らしい演奏を披露する若者たちにカメラは寄り添い、まるでその場にいるかのような緊張感と恍惚を味わえる。
 
監督:ヤクブ・ピョンテック
2023年/ 89分/カラー/ドキュメンタリー

© TELEWIZJA POLSKA S.A. AKSON STUDIO SP.Z.O.O. 2022

壮絶な復讐劇を描いた禁断の自伝的小説を映画化

『フィリップ』/ Filip

ナチスによって両親や婚約者を目の前で殺されてしまったユダヤ人のフィリップ。2年後、フランス人になりすましてドイツの高級ホテルで給仕として働く彼は、ナチス上流階級の女性を次々と誘惑し奈落に突き落としていくが……。長年、発禁処分の憂き目に遭い、2022年にオリジナル版が出版されたポーランドの作家レオポルト・ティルマントの自伝的小説の映画化。壮絶な復讐劇であるとともに、時代に翻弄された男の悲劇が胸を打つ。監督は、アンジェイ・ワイダの『カティンの森』(2007)や『残像』(2016)などのプロデューサーを務めたミハウ・クフィェチンスキ。
 
監督:ミハウ・クフィェチンスキ/2022年/ポーランド語・ドイツ語・フランス語・イディッシュ語/124分/カラー/配給:彩プロ

ポーランドを映す社会派映画監督ヤン・コマサの3作品も!

今回の映画祭では、新進気鋭のポーランド監督ヤン・コマサの作品が上映されます。
ポーランド国内のウッチ映画大学で学び、2011年より長編作デビュー。ポーランドの過去と現代を描く映画をつくりつづけています。本映画祭で上映されるコマサ監督の3作品をみていきましょう。

Profile

Jan Komasa(ヤン・コマサ)

1981年ポーランド出身。父は舞台俳優、母はゴスペルシンガー、弟妹は音楽家と画家の芸術一家。12歳のときに『シンドラーのリスト』に脇役で出演する父に同行し、クラクフの撮影現場を見学し、映画づくりの素晴らしさに魅せられる。2001年よりウッチ映画大学監督科で学ぶ。『自殺ルーム』(2011)で長編劇映画デビューし、第61回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に正式出品。長編2作目『リベリオン ワルシャワ大攻防戦』(2014)はポーランドで観客動員数180万人の記録的大ヒットとなった。長編3作目『聖なる犯罪者』(2019)は2020年アカデミー賞®国際長編映画賞にノミネート。最新作『ヘイター』(2020)がNETFLIXで配信中。監督、脚本、プロデュースと多岐に渡り活躍。

1981年ポーランド出身。父は舞台俳優、母はゴスペルシンガー、弟妹は音楽家と画家の芸術一家。12歳のときに『シンドラーのリスト』に脇役で出演する父に同行し、クラクフの撮影現場を見学し、映画づくりの素晴らしさに魅せられる。2001年よりウッチ映画大学監督科で学ぶ。『自殺ルーム』(2011)で長編劇映画デビューし、第61回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に正式出品。長編2作目『リベリオン ワルシャワ大攻防戦』(2014)はポーランドで観客動員数180万人の記録的大ヒットとなった。長編3作目『聖なる犯罪者』(2019)は2020年アカデミー賞®国際長編映画賞にノミネート。最新作『ヘイター』(2020)がNETFLIXで配信中。監督、脚本、プロデュースと多岐に渡り活躍。

日本の“ひきこもり”に着想を得た、高校生のヒューマンドラマ

『自殺ルーム』/Sala samobójców

「自殺ルーム」というチャットルームにアクセスした高校生のドミニクが、謎の少女シルビアに出会ったことから始まる衝撃的なドラマ。恵まれた環境で何不自由なく暮らしながらも、どこか満たされないティーンエイジャーが、現実と仮想現実の狭間でもがく様をアニメーションを組み合わせて大胆に描く。日本の”ひきこもり”に着想を得たコマサ監督が、満を持して放った長編デビュー作。ポーランドでは観客動員100万人以上を記録した。10年以上前の作品にも拘らず、世界中で問題となっていてカルト的人気も高い。
 
2011年/ポーランド語/110分/カラー

© 2014 AKSON STUDIO FILM MISATO SP.Z.O.O.

若者たちの闘いワルシャワ蜂起を緻密に描く

『リベリオン ワルシャワ大攻防戦』/Miasto 44

ナチスによるポーランド占領から5年目の1944年。祖国解放を目指して立ち上がったポーランドの若者たちは、レジスタンスに身を投じる。しかし突如進撃を止めたソ連軍の裏切りにより、彼らの戦いは絶望の地獄に突き落とされる。罪のない市民たちは無残に殺され、美しいワルシャワの街は廃墟と化していく。ニュースフィルムを元にしたワルシャワ蜂起についてのドキュメンタリー『ワルシャワ蜂起』(2014)と同時期にコマサ監督がフィクションとして撮った大作で、2014年のポーランドで最高の興行収入を記録した。
 
2014年/ポーランド語/130分/カラー

© 2019 Aurum Film Bodzak Hickinbotham SPJ. - WFSWalter Film Studio Sp. z o.o. - Wojewódzki Dom Kultury W Rzeszowie - ITI Neovision S.A. - Les Contes Modernes

過去を偽り聖職者として生きる男の運命

『聖なる犯罪者』/Boże Ciało

少年院で熱心なキリスト教徒となり、前科者は聖職者になれないと知りながら神父になることを夢見る青年ダニエル。仮釈放され田舎の製材所に就職が決まった彼は、偶然立ち寄った教会で新任の司祭と勘違いされ、そのまま居座るはめに。次第に住民たちの信頼を得ていくようになり……。実際に起きた事件をもとに、ある青年の数奇な運命を描く。主演は、2020年フォーブスの「世界を変える30歳以下の30人」にも選ばれたバルトシュ・ビェレニア。2020年アカデミー賞®国際長編映画賞ノミネートをはじめ各国で絶賛され、コマサ監督の名を一躍広めた代表作。
 
2019年/ポーランド語/ 115分/カラー/配給:ハーク

11月の最終週にかけて、一週間開催されるポーランド映画祭。
ポーランドの社会や文化をより深く知ることのできるこの機会に、ぜひ足を運んでみてください。

Information

ポーランド映画祭2024

期間|11月22日(金)~11月28日(木)

会場|YEBISU GARDEN CINEMA東京都渋谷区恵比寿4-20-4

上映スケジュール|https://www.polandfilmfes.com/

入場料金|一般:2000円、大学生:1500円、高・中学生:1000円、シニア(60歳以上):1300円、シネマデー(水曜日):1300円

 

主催|アダム・ミツキェヴィチ・インスティテュート(ワルシャワ)、ポーランド広報文化センター、スコピヤ・フィルム、マーメイドフィルム、VALERIA

配給|マーメイドフィルム、コピアポア・フィルム

宣伝|VARELIA

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Masumi Ishida

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