ポイ
伝統料理の代表格は、「ポイ」と呼ばれる、タロイモを蒸して練ってペースト上にしたもの。古代ハワイアン第一の主食で食生活の中心となる一品だ。
豊かな自然で、訪れるものの心を癒やす"楽園"ハワイ。どの大陸からも遠い絶海の地で、遥か昔からハワイの民は自然と神を結びつけて暮らしてきました。 ハワイの主要8島のなかでも、特異なカルチャーと自然環境をもつハワイ島をご紹介します。 ハワイ島とはどんな島か? 5つのキーワードでその概要を掴んでいきましょう。
illustration:TAKESHI TOMODA text:TRANSIT
面積
10,430km²(岐阜県と同程度。約130あるハワイ諸島の中で最大面積。愛称は”ビッグアイランド”)
人口
18万6000人(2015年調査)
通貨
米ドル
言語
ハワイ語、英語
「こんにちは=Aloha(アロハ)」
「ありがとう=Mahalo(マハロ)」
「さようなら=A hui hou(ア・フイ・ホウ)」
宗教
キリスト教(約3割)、仏教(約1割)、その他・無宗教(約6割)
ハワイ諸島の歴史は、ハワイ島の最南端、サウス・ポイントからはじまった。500〜700年頃にポリネシア人が足を踏み入れた場所だ。
その後、彼らはハワイ島に定住を決めたわけだが、この島に神秘や親密さを感じたのか、火山に岩、樹木、あらゆるところに神を見た。飢饉や災害を鎮めるため、彼らはヘイアウ(神殿)を建て礼拝し、フラで神々への敬意を表現した。
現在でも、先住民がかつて信仰した手つかずの自然や場所が、ハワイ島には多く残っている。
代表的なパワースポットとして知られるのは、ハワイ島北部のワイピオ渓谷。ハワイ語で「曲がった水」という意味で、断崖の脇は湾のように婉曲して海と接している。カメハメハ大王が幼少期を過ごした場所であり、ハワイの戦争神の保護を受けた、歴史的にも重要な聖地。ハワイ王族の隠れ家として親しまれ、偉大な族長の遺骨も眠る”王の谷”だ。
ハワイアンの主食タロイモ畑が広がり、その風景は古代へのタイムトラベルと錯覚するほど。強いマナに守られた聖地とハワイアンが信じるように、自然と祈りを唱えたくなるはず。
プウホヌア・オ・ホナウナウ国立歴史公園も、ハワイ島の信仰世界を感じさせるスポット。古来ハワイには「カプ」というさまざまな禁忌事項があり、「男女がともに食事をしてはいけない」「平民は王族の影を踏んではいけない」など日常生活のルールがあり、破れば多くの場合死刑となった。ただしその掟を破ったものでも、このプウホヌアに逃げ込めば赦されたという、駆け込み寺のような存在だった。今は平和をもたらす場所として親しまれている。
キラウエアは、地球上でもっとも活発な火山であり、今なお活動中。キラウエア火山があるハワイ火山国立公園はハワイで唯一の世界遺産だ。火の女神ペレが住むといわれるハレマウマウ火口は今も白煙が上り、地球の鼓動をダイナミックに感じることができる。この場所から土地のものを持ち帰ることは厳禁。溶岩をお土産に持って帰ると、ペレの怒りに触れて不運に見舞われる、という言い伝えも。
また、あまり知られていないがハワイ島にも雪が降る。平均気温が夏は27度、冬は19度と通年温かいハワイ島だが、マウナケア山は富士山より高い標高4205m。冬には山頂が雪に覆われる。ビーチで遊んでスキーする、なんてプランも可能なのだ。
ハワイ島の人びとは、火山の噴火や雪、森、花々、そこかしこに神(ハワイ語で「アクア」)を見た。目に見えるものすべてに神が宿ると考え、動物を捕まえたり木の実を収穫したり、自然に対して人間が行動を起こすときは必ず、そこに宿る神様に祈りを捧げ、許しを得ていたという。
ハワイの創生神話「クムリポ」には、世界のはじまりから生物の誕生と進化、神々や王族の系譜が16章にわたり描かれている。物語では、神様も恋をしたり、嫉妬したり、失敗をする。必ずしも完璧ではない人間的な神の姿に、人びとは慰められることも多かったのだろう。
火山の噴火が起きると火の女神ペレを怒らせたせいだと怯え、雪の神ポリアフが沈静させることを願う姿などは、人びとの切なる祈りから生まれたものと想像できる。自然に対して人間が何かできるとしたら、祈ることだけなのだ。
「フラ(Hula)」とは、歌と踊りのことで、さまざまな意味が込められた聖なるダンスだ。ハワイの伝統芸能であり、古代には儀式的役割も担っていたが、20世紀にハワイが観光地として発展すると同時にフラも商業的なものにもなっていく。
しかし本土でのべトナム反戦運動などで、ハワイアンにも先住民族意識が高まる。70年代に政治から文化にまで広がった「ハワイアン・ルネッサンス」においてフラは大きな役割を果たす。フラの伝統が見直され、新たなかたりで生み出されるようになった。
衰退の危機を乗り越えてきた舞いは、まさにハワイアンの心なのだ。
ハワイのグルメは大きく分けて2種類、「ハワイアンフード」と呼ばれる伝統料理と、「ローカルフード」と呼ばれる郷土料理がある。
伝統料理の代表格は、「ポイ」と呼ばれる、タロイモを蒸して練ってペースト上にしたもの。古代ハワイアン第一の主食で食生活の中心となる一品だ。
サイコロ形に切った生魚を塩や海藻で和えた「ポケ」もハワイアンフードの一つとして親しまれている。「ポケ」とはハワイ語で「切り身」という意味。生魚に生姜や醤油などが加えた料理であるため、日本人の口にもよく合う。
日本、中国、韓国、フィリピンなど、世界各国から集まった移民に影響された料理もハワイならでは。スパムむすびもその一つだが、代表格はなんといっても「ロコモコ」。ご飯にハンバーグとグレービーソースをのせ、目玉焼きをトッピングしたもの。ハワイ島が発祥の料理で、日本人の間でも広く知られている。